奈良女子大学附属中等教育学校 令和6年度(2024年度)の出題傾向/出題形式について
奈良女子大学附属中等教育学校
出題傾向/出題形式
令和6年度(2024年度)一般適性検査
表現Ⅰ(国語)
国語領域の問題は大問2・3
(表現Ⅰ 100点満点(60分)/ 国語領域70点・社会領域30点)
■ 大問2:「文章の全体像」をつかむ力が求められる
2年続けて「物語」が素材文でした。
「人間と仲良くしたい狼たちの思いを理解した上での心情説明」(問4)、
「エピソードの整理」(問5)、「主題を踏まえた論述」(問6)もあり、
「文章の『全体像』をつかむ→その上で、文章の『部分』の意味や作品の主題をつかむ」という、「マクロの視野」が求められるものとなっていました。
■ 大問3:「問題解決についての意見表明」が続く傾向
今まで頻出であった「ちがいの説明・共通点の説明」の設問はありませんでした。
ただし、2021「通学路について」、2022「マスクをした状態でのコミュニケーションのあり方」に続き、今回も「○○という問題の解決方法」という出題であった点は例年通りであったと言えます。
大問3では「大問2の本文との関連付け」は指示されていませんでしたが、問2は「人間と自然の共生」という観点であり、大問2の内容と関連していました。
大問2 (文章読解) | 本文内容 | 出典:『狼森と笊森、盗森』(宮沢賢治) 分野:児童文学(物語)内容:岩手山の麓の四つの森と入植者との交流を描く作品である。自然と人間の共生について読者に考えさせる内容。 |
問1 | 漢字書き取り5問。 小5配当漢字は2字で、それ以外は小3〜4配当漢字。 | |
問2 | 傍線部の主語を文中から抜き出す問題(5字以内) | |
問3 | 比喩表現の内容を書く問題(20字程度) | |
問4 | 理由説明(心情説明)(2つ答える/各2行)。 登場人物(狼)が「困った」理由を、文中のことばを利用して書く。 | |
問5 | 出来事の整理(1行×5問)。 作品中の三つのエピソードうちの二つを、文中のことばを利用して表の空欄を埋める形で書く。 | |
問6 | 作品の結末部分の理由説明(3行)。 なぜそのような結末になったのかを、本文の内容をふまえて書く。 実質は「文章の主題をつかむ」という趣旨の設問 | |
大問3 (資料問題) | 問1 | 意見論述(2行)。 資料をもとに「インターネット上の情報が正しいかどうかを確かめるためにはどのようにしたら良いか」について書く。 |
問2 | 意見論述(4行)。 資料をもとに「クマの被害をおさえるためにはどのような方法をとったらよいか」について書く。 |
表現Ⅱ(算数)
算数領域の問題は大問3~大問6
(表現Ⅱ 100点満点(60分) / 算数領域70点・理科領域30点)
例年、 グラフの読み取りまたは作図の問題、 平面図形、 規則性の問題がよく出されており、 今年度もその傾向は大きくは変わりませんでした。
ここ数年、図形やグラフの作図と理由などを説明させる出題が続いていますが、 今年度は、 理由を説明する問題は出されたものの、 コンパスを使った図形の作図やグラフの作図の問題は出されませんでした。
また、答えのみを書く問題が4問もあり、 例年にはない出題形式でした。
問題の構成としては、各大問に小問が2問や3問あり、昨年度のような大問で1つの問題になっているような問題はありませんでした。
また、 大問内で連動している問題が少なく、 (1)の問題がわからなくても(2)や(3)の問題を解くことができる問題が多くありました。
そのため、 解ける問題をしっかり見極めることが重要でした。
さらに、 近年は理科の内容の問題用紙が2枚になっており、今年は理科の内容が先に出題されたので、 理科の問題を解くのに時間がかかってしまい、算数の問題を解く時間が足りなかった受検生も多かったと考えられます。
大問番号 | 小問数 | 内容 |
---|---|---|
[3] | 2 | 平面図形のまわりの長さと面積 |
[4] | 3 | 対称図形(図形の作図の問題あり) |
[5] | 3 | 規則性(約数と素数、理由を説明する問題あり) |
[6] | 3 | 図形の移動とグラフ |
表現Ⅱ(理科)
理科領域の問題は大問1〜大問2。
(表現Ⅱ 100点満点(60分) / 算数領域70点・理科領域30点)
大問2問、小問6問。
算数と合わせて60分のため、理科にかけられる時間は15分〜17分程度と想定されます。
今年度の傾向として、「実験結果を考え、その理由を説明する問題」「実験結果や現象に関する理由を説明する問題」「実験結果をもとに、身近な現象が起こる理由を考える問題」など、「実験結果や現象が起こる理由を考えて説明する問題」が多数出題されました。
これらの問題は、 奈良女子大学附属中等教育学校の代表的な出題傾向であるとともに、 得点差が大きくついた問題になったと考えられます。
今年度は出題されていませんが、実験方法を説明する問題もよく出題され得点差がつく問題になっています。
また、かげの動きの記録から午前8時の記録を選ぶ問題のような、基本的な知識を問う問題が一昨年度から出題されており、 確実に正解しておきたい問題でした。
大問番号 | 小問数 | 内容 |
---|---|---|
[1] | 3 | (1)空気でっぽうを押し込んだとき、空気でっぽうの中の風船の大きさの変化を理由とともに説明する問題 (2)霧ができることから、筒内の空気の温度の変化を説明する問題 (3)炭酸飲料が入った容器のふたを開けたとき、容器の中で一瞬、霧ができる理由を、空気でっぽうの現象と関連づけて説明する問題 |
[2] | 3 | (1)かげの記録の中から、午前8時の記録を選び、記号で答える問題 (2)かげができる向きは毎時間15度ずつ変化すると予想した理由を説明する問題 (3)かげの向きの変化が、毎時間で一定にならない理由を説明する問題 |
表現Ⅰ(社会)
社会領域の問題は大問1
(表現Ⅰ 100点満点(60分) / 国語領域70点・社会領域30点)
大問1問、小問が5問。
国語と合わせて60分なので、社会にかけることができる時間は20分程度と想定されます。
地理分野が1問、歴史分野が3問、公民分野が1問のそれぞれの分野の知識を活用して説明する形式で出題されました。
そのうち資料の読み取り問題が地理分野と歴史分野でそれぞれ1問出題されました。
資料のデータや事実を適切に読み取る力、さらにそのデータや事実の背景について、適切な言葉を使い表現する力、抽象化されている問いに対して具体的な例を挙げて説明する力が求められました。
問題の難易度は標準的です。
地理分野(貿易)、歴史分野(平安時代の文化、明治政府の政策)、公民分野(基本的人権)に関する知識を活用して、適切に説明できるかがポイントとなります。
小問番号 | 出題内容 |
---|---|
問1 | かな文字がつくられた時代と、かな文字を用いることで日本の文化に与えた変化を説明する問題。 |
問2 | 沖縄銀行の通貨交換所の写真を参考に、写真の場面について歴史的背景を含めて説明する問題。 |
問3 | 蝦夷地を北海道と改め、アイヌの人々への政策を進めたことで起きた、アイヌ人の生活の変化を説明する問題。 |
問4 | スーパーマーケットにイスラム教の女性が店員として働くこととなり、以下の2点を店長の立場として考える問題。 (1)女性が働きやすい職場にすることが必要な理由を、基本的人権の点から説明する問題。 (2)(1)の内容を実現するための工夫を、具体例を挙げて説明する問題。 |
問5 | (1)日本の輸入先を表す3つのグラフから、「小麦」を表すものを選ぶ問題。 (2)原油・小麦のどちらかについて、輸入に頼ることで日本にもたらす問題を説明する問題。 |
表現Ⅲ
表現Ⅲ:調査書10点満点+対話的表現10点満点(合計20点満点)
2024年度入試の「対話的表現」は、「グループ活動(30分程度)」で実施。
時間 | 内容 |
---|---|
8分間 | 封筒の中に入っている3枚の紙に書かれているイラストを見て、想像できることをグループ(5人)で話し合う。 【イラストの内容:以下の内容がそれぞれ棒人間で表現されている】 A:レンガ塀の前の地面にひざまずいている人とその上に立っている人・歩いている人 B:ベンチに並んで座っている二人の人物(1人は泣いているような様子)と、走っている人 C:3人の立っている人(腰に手を当てている・片手をあげている・腕を組んでいる) |
15分間 | 3枚の絵から2枚を選び、小学校1年生が笑顔になるようなお話を作る。 |
5分間 | 新たに配られた紙に話し合ったお話のあらすじを書く。 |
令和6年度(2024年度)連絡進学適性検査
表現Ⅰ(国語)
表現Ⅰは国語領域の問題。100点満点(50分)
1.「考えて書く」と「文中のことばを利用して書く」の2形式が基本。
記述問題に関しては、「自分で(もしくは本文内容から)考えて書く」問題と、「文中のことばを利用して書く」問題の大きく分けて2つの形式で構成されています。
今年は「ことわざ・慣用句」などの知識問題は出題されませんでしたが、書きぬき問題が2問だけ出題されました。
なお、 最後の問題は自分の意見文を書く問題ですが、 記述する上では様々な条件が指定されています。
やや出題傾向が変わったように見えますが、一方でこの形式は2021年の表現Ⅲ(記述式)の形式と酷似しており、その点では表現Ⅲの対策をきちんとしている生徒にとっては、不利になる内容ではなかったと言えます。
2.「対比」「比較」の思考を求められる問題構成。
筆者の主張に関する問題が中心ではありますが、「共通点・相違点を考える問題」など、奈良女子大学附属中特有の問題も多く出題されています。
また、本文の構成としても「第一に…。第二に…」「それに対して…」など、他の物事と比較しながら順序だてて説明していく文章であったため、全体を通して「対比」「比較」の思考が求められた入試であったと言えます。
大問1 | 本文内容 | 論説文(「コミュニケーションの日本語」森山卓郎より) |
問1 | 漢字の書き取り | |
問2 | ぬき出し問題(具体と抽象の関係性を問う) | |
問3 | 文中のことばを利用して共通点を説明する問題 | |
問4 | 文中のことばを利用して相違点を説明する問題 | |
問5 | 文中のことばを利用して傍線部を言いかえる問題(25字程度) | |
問6 | 文中のことばを利用して傍線部の理由を答える問題(50字以内) | |
問7 | ぬき出し問題(傍線部内容の解決方法を問う、20~30字程度) | |
問8 | 本文をふまえて筆者の表現意図を読み取り説明する問題 | |
大問2 | 問1 | 意見文の構築 ~学校に自動販売機を設置することに対して、賛成か・反対か~ ※賛成派・反対派の意見理由が書かれた表が用意されており、その表にはない理由を用いて意見文を書くように条件指定あり。 また、自分の意見に反対する意見を予想して書き、反対意見を持つ人をどう説得するのかについても説明するように要求されている。 |
表現Ⅱ(算数)
表現Ⅱは算数領域の問題。100点満点(50分)
大問数は7問から6問に減りましたが、 小問数は13問と昨年と変わりませんでした。
ただし、 問題用紙が2枚から3枚になっていたので、 問題数が多かったと感じた受検生もいたと考えられます。
- 2021年度:大問6・小問12
- 2022年度:大問7・小問14
- 2023年度:大問7・小問13
一般入試と違い、 大問1で必ず計算問題が出されます。
今年は昨年同様4問で、 難易度もほとんど変わりませんでした。
また、一般入試と比べて大問数が多いので、 さまざまな単元から出題されます。
ただし、グラフをかいたり、途中式をかく問題が出されたりするのは、 一般入試と同様です。
最近の傾向として、 一般入試と同じように「理由を説明する問題」がよく出されるようになり、 問題の難易度も一般入試とほぼ差がない状態です。
- 2019年度 1問(割合についての説明)
- 2020年度 3問(消費税に関する問題・代表値の選択理由・同じ個数にならない理由)
- 2021年度 1問(概算を使った説明)
- 2022年度 3問(円周率の説明・円周率が3より大きいことの説明・概算を使った説明)
- 2023年度 出題なし
今年度については、 理由を説明する問題が2問出ていた。(台形の面積の公式の説明・規則性の計算方法の説明)
また、グラフの作図やコンパスを用いた図形の作図の問題も出ており、コンパスを用いた作図が出題されたのは今年が初めてでした。
全体的に問題の難易度はそれほど高くないですが、 式だけでなく言葉で説明しなければならない問題が多く、記述力が問われる内容でした。
大問番号 | 小問数 | 内容 |
---|---|---|
[1] | 4 | 計算問題 |
[2] | 2 | 図形の移動(コンパスを用いた作図あり) |
[3] | 1 | 割合 |
[4] | 1 | 台形の面積の公式の説明 |
[5] | 2 | 規則性(説明問題あり) |
[6] | 3 | 速さとグラフ(グラフの作図あり) |
表現Ⅲ
表現Ⅲ:調査書200点満点+対話的表現30点満点(合計230点満点)
2024年度の「対話的表現」は、「グループ活動(25分程度)」で実施。
時間 | 内容 |
---|---|
5分間 | 新小6生全員が参加する1泊2日の「新しい宿泊行事」を行うことになったので、宿泊行事の目的を話し合う。 |
20分間 | 具体的な行き先と活動内容を話し合う。 (15分後に追加課題発表) グループに1枚ずつ、「目的・行き先・活動内容」というタイトルが書かれた紙が配られ、決まったことを紙にまとめる。 |
過去の出題形式