奈良女子大学附属中等教育学校 令和5年度(2023年度)の出題傾向/出題形式について
奈良女子大学附属中等教育学校
出題傾向/出題形式
令和5年度(2023年度)一般適性検査
表現Ⅰ(国語)
国語領域の問題は大問2・3
(表現Ⅰ 100点満点(60分)/ 国語領域70点・社会領域30点)
■ 大問2
近年出題されていなかった「物語」が素材文でしたが、
①内容が「主人公の考えの発展」であること
②設問が主として「文中のことばを利用した理由説明」であること
上記のことから、問われている読解力は例年通り、「文章中の『論理』の読み取りが中心」であったと言えます。
■ 大問3
「ちがいの説明」「未来をどのようにデザインするかについての意見の表明」という点で、「例年通り」といえる内容でした。
「読解問題の本文との関連付け」は指示されていませんでしたが、「わかりあうこと(コミュニケーションのあり方)」という主題は大問2・3で共通していました。
表現Ⅱ(算数)
算数領域の問題は大問1~大問4
(表現Ⅱ 100点満点(60分) / 算数領域70点・理科領域30点)
例年、グラフの読み取りまたは作図の問題、平面図形、規則性の問題がよく出されており、今年度も大きくは変わりませんでした。
ここ数年、図形やグラフの作図と理由などを説明させる問題がよく出されています。
今年の算数については、グラフの作図の問題は出されましたが、図形の作図の問題は出されませんでした。
今年度は大問1と大問3の小問が1問だけだったので、解けなかった場合、大幅に点数が下がってしまうと考えられます。
また、大問4も(1)や(2)がわからなければ残りの問題も解けないので、全体を通してどこまで部分点が取れたかが重要になってきます。
また、今年度は理科の内容の問題が2枚にわたって書かれていたので、問題を解くまでに時間がかかってしまい、時間が足りなかった受験生が多かったと考えられます。
そのため、男女ともに受検者平均と合格者平均で差が20点以上あり、大きく開く形となりました。
- 2023年度の点数差
男子…20.9点
女子…21.1点 - 2022年度の点数差
男子…18.5点
女子…21.6点
大問番号 | 小問数 | 内容 |
---|---|---|
[1] | 1 | ニュートン算 |
[2] | 3 | 立方体の積み重ね(きまりを説明する問題あり) |
[3] | 1 | 回転体 |
[4] | 4 | 動点とグラフ(グラフの作図あり) |
表現Ⅱ(理科)
理科領域の問題は大問5~大問6。
(表現Ⅱ 100点満点(60分) / 算数領域70点・理科領域30点)
大問2問、小問6問。
算数と合わせて60分のため、理科にかけられる時間は15分~17分程度と想定されます。
今年度の傾向として、
「実験結果から分かることを説明する問題」、「実験操作に関する理由を説明する問題」、「実験結果を考える問題」など、「実験に関して説明する問題」が多数出題
されました。
これらの問題は、奈良女子大附中の代表的な出題傾向であるとともに、得点差が大きくついた問題になったと考えられます。
また、植物のはたらきの空欄補充問題や、「実」であるものを選ぶ問題などの基本的な知識を問う問題が昨年度から出題されており、確実に正解しておきたい問題でした。
大問番号 | 小問数 | 内容 |
---|---|---|
[5] | 4 | (1)植物のはたらきの説明文中の空欄をうめる問題(3問) (2)いろいろな野菜の中から「実」であるものをすべて選ぶ問題 (3)野菜を入れていないふくろを用意した理由を説明する問題 (4)実験結果から分かることを説明する問題(2つ) |
[6] | 3 | (1)ふりこの動きの規則性について説明する問題 (2)実験結果から分かることを説明する問題 (3)これまでの実験結果をふまえて、別の実験結果を考え、説明する問題 |
表現Ⅰ(社会)
社会領域の問題は大問1
(表現Ⅰ 100点満点(60分) / 国語領域70点・社会領域30点)
大問1問、小問が5問。
国語と合わせて60分なので、社会にかけることができる時間は20分程度と想定されます。
資料の読み取り問題が2問、地理・歴史分野の知識を活用して説明する問題が3問出題されました。
資料のデータや事実を適切に読み取る力、さらにそのデータや事実の背景について、適切な言葉を使い表現する力、抽象化されている問いに対して具体的な例を挙げて説明する力が求められました。
問題の難易度は標準的です。
地理分野(産業・環境)、歴史分野(農業や工業の歴史)、公民分野(現代社会)に関する知識を活用して、適切に説明できるかがポイントとなります。
小問番号 | 出題内容 |
---|---|
問1 | 国際連合の目的が書かれた資料を読み取り、国際連合の活動について説明する問題。 |
問2 | 鎌倉時代から室町時代の飢きんによる「危機」を乗り超えようとした農民たちの工夫を、具体的な例を挙げて説明する問題。 |
問3 | 日清戦争後から第一次世界大戦にかけて、日本の工業化がどのように進んだかを説明する問題。 |
問4 | 自動車を中心とする社会に変化したことが、自然や環境、人々の生活にもたらした「危機」の例とその「危機」を乗り越えるために自動車生産で行われている取り組みの例を、それぞれ1つ挙げる問題。 |
問5 | 「こども食堂」の取り組みが全国的に広がっている理由を、「正社員・非正社員の数と、働く人に占める非正社員の割合」の資料から読み取れることをふまえて、考えを述べる問題。 |
表現Ⅲ
2023年度入試は「グループ活動」で実施。
10点満点(20分)
表現Ⅲ:調査書10点満点・対話的表現10点満点(合計20点満点)
内容 | |
---|---|
問題 | 「春・夏・秋・冬」の4つの季節の中から1つ選んで、言葉を使わないで表現する方法をグループで20分間考え、30秒間で発表しなさい。ただし、声を出してはいけませんし、ものを使ってもいけません。また、危険なことやお互いが触れ合うこともないように、体で表現しなさい。 |
令和5年度(2023年度)連絡進学適性検査
表現Ⅰ(国語)
表現Ⅰは国語領域の問題。100点満点(50分)
1.「考えて書く」と「文中のことばを利用して書く」の2形式が基本。
2020~2021年度で2年連続「論説文」が出題されたように、2022年度に引き続き2023年度も「物語文」の出題でした。
記述問題に関しては、「自分で(もしくは本文内容から)考えて書く」問題と、「文中のことばを利用して書く」問題の大きく分けて2つの形式で構成されています。
各問の記述字数などは例年並みですが、書きぬき問題や、「ことわざ・慣用句」などの知識問題が出題されなかったことから、記述に特化した出題であったと言えます。
なお、最後の問題は自分の意見文を書く問題ですが、「他者の意見を理解→それを踏まえた上での独自の意見構築・課題の発見および課題の解決方法の提示」が求められており、設問の「本質」は例年通りでした。
2.「物語文」の出題ではありますが、「出来事の要約」が中心の出題。
2022年度で出題されていた「心情説明」の問題は1問も出題されず、全体的に「行動の理由」を問う問題形式でした。
行動の理由を示すためには、直前に書かれていた出来事を要約する力が試される上に、今回は「登場人物の台詞」が大半を占める文章構成であったため、そのまま文章の表現を書きぬく形では得点に繋がらなかったと予想されます。
口語表現を自分で言いかえて説明するという「言いかえ力」も試される問題構成であったと言えます。
表現Ⅱ(算数)
表現Ⅱは算数領域の問題。100点満点(50分)
昨年度、3年ぶりに大問数が7問になりましたが、今年度も7問でした。
ただし、小問数は14問から13問に減りました。
- 2020年度:大問6・小問13
- 2021年度:大問6・小問12
- 2022年度:大問7・小問14
計算問題はここ2年は5問でしたが、今年度は4問でした。
(2016年度以来7年ぶり)
一般入試と比べて大問数が多いため、さまざまな単元から出題されます。
ただし、 グラフをかいたり、 途中式をかく問題が出題されたりするのは、一般入試と同様です。
最近の傾向として、 一般入試と同じように「理由を説明する問題」が必ず出されるようになり、 問題の難易度も一般入試とほぼ差がない状態です。
- 2018年度 1問(多角形の内角の和)
- 2019年度 1問(割合について)
- 2020年度 3問(消費税に関する問題・代表値の選択理由・同じ個数にならない理由)
- 2021年度 1問(概算)
- 2022年度 3問(円周率の説明・円周率が3より大きいことの説明・概算)
今年度については理由を説明する問題は出題されませんでしたが、 大問4の規則性の問題や大問7の水量変化とグラフの問題などでは、 式だけでなく言葉による説明が必要だったと思われます。
また、 1枚目の問題は比較的易しく、 2枚目の問題が比較的難しくなっています。
そのため、 1枚目の問題でどれだけきちんと正解できたかによって合否が左右されたと考えられます。
最近では、この傾向は見られませんでしたが、 5年ほど前まではその傾向が強くありました。
大問番号 | 小問数 | 内容 |
---|---|---|
1 | 4問 | 計算問題 |
2 | 1問 | 割合 |
3 | 1問 | 速さ |
4 | 2問 | 規則性 |
5 | 1問 | 差集め算 |
6 | 1問 | 平面図形の面積 |
7 | 3問 | 水量変化とグラフ |
表現Ⅲ
2023年度入試では、「グループ活動」として実施。
30点満点(40分程度)
表現Ⅲ30点満点・調査書200点満点(合計230点満点)
内容 | |
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問題(15分) | 「新しい授業」を作ります。授業の時間は50分とします。1年を通して行います。「新しい授業」の名前や内容を聞き合いなさい。その「新しい授業」を選んだ理由も聞き合いなさい。 |
準備(1分)発表(2分以内) | 班ごとに最大で2分間の発表を行います。2分以内でも良いです。発表準備は1分間で行います。 |
追加課題(7分) | 班ごとに、自分や他の班の発表の良かった点、改善点を聞き合いなさい。 |
※2022年10月30日(日)に実施した「奈良女子大附中模試」の「表現Ⅲ」問題とほぼ同じ問題が出題されました!